chapter4.
価格のメカニズム

ハウスメーカーについて、よく言われていることがあります。

「ハウスメーカーの住宅はムダな経費が上乗せされているから割高だ」

知らない人が聞いたらもっともらしく聞こえる言葉です。さらに原価と経費を地域工務店との比較を図で説明されたら、確かにそうだと思う方もいるでしょう。でもこの言葉には、正しい部分と間違っている部分があります。

経費と原価

第1講の「ハウスメーカーの特徴」では、もともとハウスメーカーが次々に創業されたのは、戦後の高度経済成長期に住宅の需要が高まっていく中で、一定の品質を保った住宅を大量、かつ安価に供給する必要性が急速に高まったことが背景にあると説明しました。

また、第2講の「メリットとデメリット」では、ハウスメーカーの特徴は、「工業化(プレハブ化)」と「大量生産」にあり、その結果として、「より多くの人が求めるであろう住宅を、一定の品質でより多くの人に供給できる」という特徴があると説明しました。

ハウスメーカーが創業された当時の目的である、一定の品質を保った住宅を安価に供給するためには、部材の規格を統一したり、できるだけ作業を効率化するための工夫が必要でした。さらにこれらを工場で大量生産すれば、1軒あたりの建築に必要な原価を低減することが可能になります。

しかし、工場を持っていれば、設備を休ませることなく工場を稼働しなければなりません。つまり、大量生産のメリットを発揮するためには、「買ってくれる人」をたくさん集めるための一定の集客コストが必要になります。

例えば、テレビコマーシャルや新聞、雑誌、ラジオ、インターネットなどの広告を打ち、モデルハウスを出店し、営業マンが手厚いサービスを行う、という形でより多くのお客様に自社をアピールするための機会を設けなければなりません。

当然、より多くの人に訴求するためには、集客するためのコスト、商品を売るためのコストが必要になります。これが世間で「ムダな経費」と言われる部分です。

「ムダな経費」という誤解

実際に、ハウスメーカーの建築費のうち、原価は60%程度、経費は40%程度を占めていると言われています。冒頭の言葉は、この40%程度の経費が原価に「ムダ」に上乗せされているから、高い買い物をさせられているという解釈です。

例えば、建築費が3000万円の住宅があるとします。このうち60%の1800万円が原価で、40%の1200万円が経費です。

もしこの1200万円の経費がなかったら、ハウスメーカーは原価を1800万円に抑えることはできません。経費を掛けずに建物を供給しようと思ったら、原価は高くなるはずです。結果としてトータルの建築費は高くなるでしょうし、以前と同じ建築費で提供しようと思ったら、建物のグレードを下げざるを得なくなったり、手厚い保証やサービスの提供はできなくなるでしょう。

つまり、原価に無駄なものが上乗せされているのではなく、ハウスメーカーはこれだけの経費を掛けることによって、原価を低減できていると言えます。

この話題でよく比較されるのは、工務店のコスト構造です。

工務店の建設費のうち、原価は約80%、経費は約20%と言われています。 工務店は地域に密着して、少量、多品種の住宅を供給しています。ハウスメーカーのような工場を自前で持つ必要はありませんし、大量生産のメリットを発揮するために膨大な集客コストを掛けて「買ってくれる人」を集める必要はありません。

これは「どちらが得で、どちらが損か」という問題ではなく、単にハウスメーカーと工務店では「コスト構造が違う」という話に過ぎません。

しかし、これが割高になる直接的な原因でないにしろ、ハウスメーカーに割高なイメージを持っている人は少なくないようです。

これは冒頭に挙げた経費の問題ではなく、「建て主の敷地条件や希望」と「そのハウスメーカーが設定している標準仕様」とのミスマッチによって、標準仕様外の対応コストが生じていることに原因があると考えられます。